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- 第1章 宗教法人とは実際どんなものか
- 宗教法人の作り方 – 1.3 実は大変になることもある!
宗教法人の作り方 – 1.3 実は大変になることもある!
前節で述べたように、宗教法人にはいくつかの利点がある反面、煩わしい義務を背負うという側面もあります。何しろ公益法人ですので、それにふさわしい形で運営されるよう、法律でいろいろな定めが置いてあるのです。
規則に従った運営をしなければならない
株式会社などには、会社の根本原則を記載した「定款」という定めが置いてあります。宗教法人ではこれに相当するものに「規則」があり、必ず定めなければなりません。
例えば、法人の名前・住所、役員の人数、財産の取り扱い方法、毎年作るべき書類…などなど。法律によって決められた項目に加えて、独自の項目を作ることもできます。
そして、規則を変更するときには所轄庁に申請して認証してもらわなければなりません。勝手に変えられないのです。
「所轄庁」とは
ここでは、各都道府県庁のことだと思ってください。厳密には違う場合もありますが、単立法人を設立する場合はそう考えて差し支えありません。
引っ越しが大変
宗教法人が拠点となる場所を移転する作業は、一筋縄では行きません。宗教法人の主たる事務所の住所は規則に書かれています。単に規則を改正して住所を書き換えれば良いように思えますが、それが大変なのです。
少なくとも移転の一年前から準備を始め、宗教活動の記録を綿密に残し、移転後はまた一年間かけて新しい場所での宗教活動の実績を作ります。その後、やっと所轄庁に規則変更の申請をして、認められれば完了です。つまり、最低でも二年間はかかりますし、申請が認められなければ水の泡。所轄庁に確認と根回しをしながら慎重に進めなければなりません。
住所の変更以外にも、新しい場所の土地・建物については非課税とするための手続きも同時に行わなければなりませんので、それらを含めた段取りをよく考えて実行する必要があります。
ただし、住所変更手続きの大変さは地域によって異なります。都会→地方よりも地方→都会のほうが煩雑になる傾向があるようです。これには、地方の宗教法人を買い取って都会に移転してビジネスに利用する…といった行為を防ぐ事情があります。
財産の処分に手続きが必要
例えば、境内地の一部を売却したり、土地や建物の一部を貸して賃貸収入を得たりしたいと思ったとします。そのようなときには、ただ単に契約をして登記を済ませるだけでは手続きが完了しません。
役員会を開いて決議、議事録を作成するに加えて、少なくとも一ヶ月前に「公告」しなければなりません。公告とは、信者や利害関係人に対してお知らせする手続きのことです。やり方は独自の方法を規則に定めておきますが、一定期間張り紙をしたり、会報に掲載したりする方法が多いです。お知らせした結果、誰かから異議があればそれを検討するために再度役員会を開くことになります。
これらの手続きを怠ると、なんと処分の行為自体が、法律上無効となってしまいます。
書類を作成する義務がある
宗教法人は次の書類を作成しておかなければなりません。そして、その一部を毎年所轄庁に提出します。
- 役員名簿
- 財産目録
- 収支計算書
- 貸借対照表
- 境内建物に関する書類
- 役員会等の議事録
- 事務処理簿
- 事業に関する書類
※個々の法人の状況により、作らなくても良い書類もあります。
これらの書類は、信者などから「見せてください」と要求があった場合は原則的に見せなければなりません(例外はあり)。
宗教活動は、宗教法人にならずとも自由に行うことができます。法人化を志す際には、自分たちの団体はこのような煩わしさを負ってもなお目指すべきか、よく検討すると良いでしょう。